Serenita

感情の消化。

西日本18きっぷ女一人旅 〜兵庫・城崎編〜

 

前回の続き。

 

この日の午後の目的地は城崎温泉

 

播但線

城崎温泉までは姫路から播但(ばんたん)線に乗り、山陰本線を乗り継いで計2時間40分の道のり。兵庫って意外と大きい。

 

姫路駅で播但線のホームを探すとだいぶ端っこの方にあった。あ、これは久しぶりの田舎の線かも。と思いながら車内に入ると、白骨化(?)した大きめの虫の死骸が見える範囲だけでも2体転がっていた。ついでに2両編成。ああ、これは確信。ここまでの旅はそこそこ人が乗っている電車旅だった上に、前日神戸にいた私はローカル線でちょっと嬉しい。

 

それにしても「播但線」って、KPOPファンが黙ってなさそうな名前。名前の由来が旧国名なのは言うまでもなく、昔兵庫県の瀬戸内海側は「播磨(はりま)の国」、日本海側は「但馬(たじま)の国」だった。

まあ大体こんな感じ?

まずは寺前まで50分ほど。私は本を読むことに夢中になりすぎてほぼ記憶がない。

 

寺前で和田山行きに乗り換える。播但線は姫路から寺前間は電化されているのだが、寺前から先は非電化区間のためディーゼル車に乗り換える必要がある。姫路から乗って来た人たちがほとんどごそっと和田山行きに乗り換えた。あれ、行き先もしかして同じ?

 

この寺前から和田山間。停車駅はわずか6駅!にも関わらず乗車時間は50分。Yahooの乗り換えアプリを何度も見たけど、やっぱり6駅。ただ出発してすぐにその理由が判明した。速度が信じられないくらい遅い!!ディーゼル車は今までにも乗ったことあるけどこんなに遅いことはなかった。

 

軽く調べてみると、寺前から和田山間は赤字区間のため速度を落とすことで線路への負担を軽減し、保守経費削減をしている説(公式の話ではないのであくまでも推測)。なるほどねえ〜。

 

時速20kmくらいに感じるほど遅いところもあり、秋が訪れつつあるのどかな田園風景と山を見ながらぼんやり「ザ・鈍行の旅」。真夏とも思える暑さの日差しが照らす黄金色の風景が綺麗で、斜め前に座っていた外国人が写真を撮っていた。

 

和田山に着く。乗っていた人がこぞって山陰本線に乗り換えた。やっぱりみんな行き先は一緒だ。この旅初の山陰本線。ついに山陰地方に足を踏み入れる。これまた7駅で40分の旅だった。

 

城崎温泉駅の2つ前に豊岡というまあまあの大きさの駅がある。そこでいつからか乗って来ていた地元の人や小学生のスポーツチームらしき集団がまとまって降りたため、斜め前に座っていた外国人がそわそわしていた。恐らく城崎温泉に行きたいが、ここが城崎温泉かどうか分からない様子。集団の1番後ろにいた男の子を捕まえて、一言二言話していたが埒があかなかったらしい。車掌室のところまで行って話していた。

 

まあこんなとき私が一言、「城崎温泉は2駅先です!」と英語で言ってあげれば良いのだけど、そんな勇気はないので静かに見守っていることしかできないのです。

色がなかなかかわいい



兵庫・城崎

城崎温泉についたのは14時半だった。私は知る人ぞ知る観光地だと思っていたのだが、かなり人気の場所だったらしく意外にも大学生や若いカップルなどで溢れていた。18きっぷで1人で来たと思われる30〜50代の男性は何人か見たが、女子1人旅はいなそう。ちょっと心細くなる。

雰囲気が本当に好き

本当は泊まりたい気持ちもあったが、お金がないので滞在はしない。17時2分発の電車に乗らなければいけないので、滞在時間は2時間半しかない。早速外湯巡り開始。

 

私が入ったのは駅から近い地蔵湯。暑かったので早く建物の中に入りたかった…。

 

外湯は1ヶ所700円/800円。何ヶ所でも回り放題の券は1300円なので、2ヶ所以上で元が取れてしまう。にも関わらず私は地蔵湯の受付で「他も回るか」と聞かれ、いいえと答えた。な、ぜ、か。自分でも衝撃です。ついでに姫路のカフェで電車見送ってでも何か食べればよかったなあと後悔するくらいお腹がペコペコでした。鈍行の旅ってお腹が空く旅でもある…。

 

タオルも持っていなかったので150円のハンドタオルを買う羽目になりながら脱衣所に入る。誰もいない。脱衣中、浴衣姿の女の子2人が入ってきた。「浴衣で女子旅いいなあ」と思って横目で見ていると、せっかく着付けした浴衣を脱ぎ始める。帰る時どうするんだろう…と思いながら私はお風呂に。

 

浴室も私1人。最高じゃん…。城崎温泉のお湯は飲めるらしいが、コロナの関係で飲むのは中止してた。

 

さてさて、体も洗ったしお湯に浸かろう♪と思って足を入れる。ところがこれがまじで大げさじゃなく「ひいいっ」となるほど熱かった。もう一度足を入れるけどとても浸かれる温度じゃない。

 

もちろん城崎温泉も知識ゼロで行ったけれど、今調べてみると「(地蔵湯の)お湯の温度はかなり高めになっています」と書いてあった…。がちで熱かった…。「せっかく来たんだから!!」と必死に数分間足だけを浸けて慣らしてから全身なんとか浸かることができた。熱くて1ミリも体を動かせなかったけれど。

 

そこにあの浴衣を着ていた女の子たちも入ってきた。彼女たちも全く同じ反応。熱くて入れない事件。「あの人熱くないのかな?」とヒソヒソ声が聞こえてきたが、とっても熱かったのを耐えて入ってました。彼女たちは結局足だけつけて浴槽の淵に座っていた。

 

5分と浸かってられないので、出ては入ってを繰り返し温泉終わり。

 

熱かった…。

 

脱衣所でメイクなどを直していると、浴衣の女の子たちも上がってきた。浴衣はどうするんだろう…と思っていたら2人とも慣れた手つきで浴衣を着て髪を直していた…。すご。浴衣の着付けくらいできるようになりたいかもなあ…

地蔵湯と自分で浴衣を着れる彼女たち

外に出るとまだまだ暑い。せっかく汗を流したのに…。2時間半の滞在だったので、スーツケースを引きずって歩くことにした私。しかもこのスーツケース、旅に出る直前に壊れてしまい、真っ直ぐ進んでくれない、だいぶ厄介なやつ。有楽町のスーツケース屋でお財布と数十分対談したが、新メンバーを迎えることはなかった。

 

続いて城崎文芸館に行くことに。この城崎文芸館に行くために城崎温泉に来たと言っても過言ではない。この旅1のテンションで文芸館に行ったのに、ひっそりとしてた。

 

ん???

んんん?????????

 

。。。水曜定休でした。

ジャパニーズポエムポストボックスの中身気になった

もはやショックを通り越して笑えてきた。厳島神社大原美術館。そしてここ。この旅、行けないところ多すぎ!

 

この城崎文芸館は城崎温泉ゆかりの作家に関する展示をしている場所で、常設展と企画展がある。次行くときまでのお楽しみにしておきたいので、あえて今詳しく調べることはしたくないが、オリジナルの本やグッズがあったり、入口横には足湯があったり、とりあえず私の好きそう空間だった。

 

私がそもそも城崎温泉に行きたいと思ったのは高校1年の時。

 

留学話の方にも書いたけど、あの頃の私は学校が嫌いで嫌いで何のために勉強しているのか分からず、そもそも「高校に進学したくない」とすら思っていたから、勉強へのモチベーションはかけらもなかった。今でもこの頃の話、ガチで書くと涙が出てくる…。

 

そんなゴミすぎる高校生活を送っていた中で、唯一ネガティブな記憶でないもの。それが現代文の小説の時間。『羅生門』、『富嶽百景』、『檸檬』、『舞姫』…最初は明治〜昭和初期に書かれた文体が苦手で親しみを持てなかったけど、先生の解説のおかげか単純な私は単元が終わる頃には「全然主人公の気持ち分からんけど世界観おもしろ。」となっていた。

 

その中の一つに志賀直哉の『城の崎にて』があった。その冒頭の一文は意味分からんくらい衝撃的だった。

山の手線の電車に跳飛ばされて怪我をした、その後養生に、一人で但馬の城崎温泉へ出掛けた。

 

「え、山手線に跳ね飛ばされた話、こんなさらっと書けちゃう人いる?」ってのが最初の印象。それでいてこのメンタルやばそう主人公(=作者)が生きる希望を見つける話かと思いきや、最後にはイモリを殺すという話…意味わかんない。

 

先生はこの冒頭の1文について触れなかった。でも私の中でこの話のハイライトは冒頭の1文だった。

 

但馬の国を知らなかった私は『城の崎にて』を読んでいる時間だけ現実逃避できた。紀行文ではないけど、それに近いものを感じていたからだと思う。同じような理由で太宰治の『富嶽百景』も好きだった。あと、昔の作家が静養のために温泉宿に引きこもるというのがなぜかかっこ良かった…。

 

それ以来、兵庫に行ったら城崎温泉に行く。そう決めていた。

 

志賀直哉の散歩コースなんかも実際にあるのだが、私はスーツケースを引いていたので諦めた。他にも城崎ゆかりの作家は多い。イモリには遭遇しなかった。

 

残念すぎたところで、とりあえず何か食べようと思った。駅近くのカフェに入る。足湯の席があって、店員さんもめちゃくちゃ優しかった…。

芋好きなので幸せ❤︎

こうして2時間半の滞在が終わった。この日は京都まで戻る、長い長い旅路。

 

城崎温泉は小説で憧れていた空気そのままだった。あの作品が書かれてからもう100年以上たつのに、疲れた心の静養地にはちょうど良い。意外と人気の観光地だったけど、女1人で壊れかけの真っ直ぐに進まないスーツケースを引いてでもまた行きたい。

来てもまだ夢の場所みたいな感じがする。なんだろう、この空気感。

この旅で遣ったお金

 

地蔵湯 700円

ハンドタオル 150円

お芋アイス 850円

 

計1700円。

 

とりあえず城崎温泉を出るまでのお金。

また来ます絶対