Serenita

感情の消化。

今更だけど書きたいこと。

私がブログを新しくしようと思ったきっかけの一つが、今更だけど高校生の時の留学生活について書きたいと思ったことだった。当時はど田舎で暮らす高校生の私の経験を発信する意味を感じなかったし、何よりそんな時間と気力がなかったけれど、今になってあの1年間は文字にして誰かに伝える価値があると思うようになった。

 

10ヶ月ほど前からスペイン語を本気で勉強しようと思い、都内の教室に通い始めた私。先生に「書きたいと思ったことを自由にスペイン語で書いて持ってきて。」と、まあよくある作文の宿題を出された。初め何を書こうかと迷ったのだが、メキシコ人の先生に、日本人の私が体験したラテンアメリカでの生活を伝えようと思い、"LA VIDA EN PANAMÁ "「パナマ生活」という何の変哲もないタイトルの作文を書き始めた。習い初めの頃、私のスペイン語力はメインの意味がやっと伝わるくらいで、小慣れた言い回しで細かいニュアンスを伝えることもできないレベルだった。小学校低学年くらいが書く、夏休みの日記みたいな、主語と述語が辛うじてある文。しかし毎回先生には面白いみたいで、これが意外にウケた。Funnyの意味とInterestingの意味で。たまに他の生徒に迷惑になるんじゃないかってくらい大声で大爆笑してくれた。毎週ノートに2ページ半ほど、単語数にしたら500ワードくらいだと思うが、パナマでのエピソードがどんどん書き足されていった。先生に、「セレニータ、センスあるよ。」と言われ、気づいたらノートが1冊終わった。

 

数ヶ月前友人から、あるエッセイ本を借りた。それはインドで生活をすることになった現役高校生が書いているものなのだが、彼女のインド生活で感じたことが素直に、高校生の目線で綴られていて面白かった。私はそのエッセイを読みながら、自分のパナマ生活と重ねた。そして懐かしい気持ちになったと同時に、高校生の彼女が、自分の経験や気持ちを誰かに伝えたい、発信したいと思い、自ら出版社のコンテストに応募した行動力を尊敬した。

 

実は私も留学して数ヶ月の頃、何かしらのアプリを使ってブログを開設していた。一緒に世界に飛び立った仲間の中で、ブログを始めることが流行っていたから、その流れに乗ってみたわけだ。でも実際に書こうとすると何を書いたら良いのか分からなくなり、結局数回日記のような文章を投稿してやめてしまった。特に文章を綴ることが面白くもなかった気がするし、誰も使っていないアプリに書き綴ったところで、何の意味があるのか分からなかった。もしあの時の私にアドバイスするなら、多分、文章は何を書けば良いか分からないけれど、とりあえず書いて書いて書き続けることが大切なのだと思う。ってことかな。

 

あれからもう6年が経つなんて信じられない。帰国してすぐの頃は、色んな人から留学の話を聞かれたし、クラスの前で話したりもした。でも高校を卒業してからはほとんど話してない。っていうか、聞かれたことがほとんどない(笑)前のブログに少しだけ、留学について書いたりしたけれど、それくらい。

 

私の文章力で、あの1年間の驚き、悔しさ、幸せ、悲しみ、何年経っても冷めることのない熱い感情を、おんなじ温度のまま活字を通して届けることは難しいと思う。でもスペイン語という、私にとっての第3言語でも人の心を動かせたなら、日本語でできないわけがない。

 

今更だけど、振り返ってみてもいいんじゃないか。

 

なんならむしろ、今ならどんなことでも包み隠さず話せるんじゃないか。

 

時効なんじゃないか(笑)

 

そんなふうにも思えてくる。

 

1つ前のブログで、人生の伏線について書いたけれど、これも伏線かもなってエピソードがあって。

 

小学生の時、将来の夢は小説家になることだった。でも動機は単純だったことをよく覚えている。

 

習っていた英会話教室で、変わった男の子がいた。同い年の彼は、英語ができて、頭の回転がとにかく速くて。当時同級生8人の小さな田舎の小学校に通っていた私にとったら、刺激的な存在だった。

 

ある時、「What do you want to be in the future?」と聞かれて彼は、「I want to be a writer. 」と言った。

 

Writer。そんな格好いい響きのものになりたい人なんて、私の周りにはいなかったし、やっぱり彼は頭がいいな、と思った。そのアイディア、盗も。と思った訳ではないのだが、その時から私の夢も小説家。Writerを"小説家"と訳すのかは別として。

 

彼のママから、彼の家は本で溢れていると聞いたが、私もそれなりに読書が好きだったのは事実だ。図書室の高学年向けコーナーにある、外国の推理小説を読み漁っていたし、新作が出るたびに東京の出版社にファンレターを書くくらい大好きな作家もいた。小学生の時の友達に会うと、「あの頃から読書好きだったよね」と言われる。学校でも家でも「小説家になる!」と公言していた。その思いを本物にするために、自作の物語を日記帳に書くようになり、それを小学校の先生に毎週読んでもらっていた。うさぎが森でレストランを始める話とか、よく先生も読んでくれたよな、という内容だったことは覚えてる(笑) あの時のノートが出てきたら面白いけど、多分もうないかな。

 

私の「小説家になる!」という熱はいつ消えたんだろう。確実に中学2年生ぐらいの時には消えていたはず。でも実は今になって、Writerになりたいなって思う。小説家なんて、大それた人にはなれないけど、ただ文章を書く人って意味の、Writer。Spotifyで音楽を聞いたり、YouTubeで動画を見るのと同じような、楽しい、面白いと思える時間を文章を通して作れたら。人の心を動かせたら。

 

だからあの時日記帳に書いていたうさぎの話は、きっと今のためにあったんだ。ああ、実家に帰ったら探してみよう、あのノート。

 

ちなみに数年一緒に英語を習ったその彼は、隣の市の教室に移動した。同じ市にすら住んでなかった彼とはもう一生会わないと思っていたのに、高校生になり、留学直前にもらった色紙の中に彼の名前があった時、私は目を疑った。彼は同じ高校の、私よりも頭が良い方の科にいた。まあ、直接会えたのは帰国後だったし、お互い大人になってしまったわけで、昔将来の夢を真似させてもらった、なんて話はできない。ついでに彼は小説家にはならなそうだ。

 

話は戻るけど、そんな感じで少しずつパナマ生活について書いていきたいなって。笑える話も重い話も。小学生の時よりはずっとずっとまともな文章で。